かもなんばん【鴨南ばん】
              参考リンク   たねもの【種物】


季節蕎麦。代表的な種物の一つ。真鴨は味にくせがあるために合鴨を使うのが一般的。
鴨肉と長ネギをかけ汁で煮てから、そばに上置きをし、かけ汁をはるのが基本的な作り方だが、煮る前にフライパンで鴨肉と長ネギをさっと焼く方法がある。合鴨は両胸の「だき」と呼ばれる部分の肉が特に味がよいとされる。
以前は寒中だけの種物だったが、現在は通年出される。合鴨は真鴨(俗に「青首」ともよばれる)の雄と家鴨(あひる)の雌との交配種で、別名アヒルガモという。鴨肉を鶏肉にすると「鳥南蛮」となる。
江戸時代に創製された種物で、「鴨なんばんは馬喰町橋づめの笹屋など始めなり」と、『嬉遊笑覧』に記してあり、笹屋が元祖とみてよい。
文政七年(1824)版三笑亭可楽の咄本『俳諧百の種』にも「笹や治兵衛が鴨南蛮」とある。
しかし、嘉永元年(1848)版『酒飯手引草』に「馬喰町一丁目角 鴨南蛮 伊勢屋藤七」と伊勢屋の屋号が出てくる。同じ一丁目にあった笹屋と伊勢屋のつながりは不明。
明治時代に川辺藤吉の名がみえ、大正四年(1915)以降に廃業した。大正末期杉山喜代太郎がその名を惜しんで復活、昭和九年(1934)両国長寿庵で修業した桑原光二が受け継いだ。

「鴨肉と葱を加ふ。冬を専とす」と『守貞漫稿』にあるとおり、「鴨南ばん」は本来、寒中だけの季節そばである。鴨は、脂ののった冬季が句であり、鳥肉のうち最も美味なものとして賞味される。鴨肉のだしのでた、こくのある汁のうまさも、また、「鴨南ばん」の魅力である。
天保一二年(1841)の江戸見聞記『江戸見草』によれば、「鴨南ばん」の値段は、「親子そば」と並んで四八文と最も高く、高級品だったことがわかる。
南ばんの名は、異国から入ったものを「なんばん」といい、ねぎ、唐辛子、南瓜などをそのように呼んでいたことに由来する。
鴨は、本鴨は泥臭くそばの味をそこなうため、たいてい相鴨の抱き身(手羽から両胸の肉のあたり)の部分が使われる。ただし、鴨肉は鶏肉より価格が高いうえ、一年を通してコンスタントに入手するのがむずかしい。そのため、「鴨南ばん」と称して、鶏肉を用いている場合が多いが、これは正式には「鶏南ばん」、「かしわ南ばん」と呼ぶ。だが最近では、輸入の冷凍ものなどが出回り、入手しやすくなった。
鴨肉を使う場合の調理のポイントは、鴨肉に火を通しすぎないことである。火が通りすぎると、肉が固くなるからだが、そうかといって生すぎてもいけない。ことに、脂身は火が通りにくいので、肉の方を厚めに切り、脂身の割合を少なくするようにバランスをとって一口大の切り身にするとよい。
脂身の部分は固いので包丁で切れ目を入れるか、あるいは、鶏の挽き肉とまぜて包丁でたたき、団子にしてもよい。団子を作る場合は、火の通りが悪いので、先に辛汁三、だし七の割合で味つけするとよい。鴨肉は、必ず汁が煮立ってから入れる。多少、鴨肉から黒ずんだアクが出るが、ていねいな仕事では、アクを取った方がよい。
鴨にそえるねぎは、昔から相性のよいものとされ、煮るだけでもよいが、切らずに焼いたり、あるいは、胡麻油か鴨の脂でサッと炒めてもよい。薬味は、さらしねぎ、粉山椒など、
また、季節によっては、柚子や木の芽をそえるのもよいだろう、

汁を煮立てた中に、鴨肉を入れる。煮立てないところへ入れると、汁が濁るので注意する。 湯通しして温めたそばの上に菜箸で鴨肉をのせる。鴨肉はいったん静まった汁がもう一度煮立ったら火が通っている。
           材 料
 

 鴨肉(抱き肉)     約60g
 ねぎ           6〜7cm
 三つ葉         1本
 柚子           少量
 甘汁           250〜280t

火を消す少し前に、縦割りにしたねぎ を加える。 ねぎが半生の状態になったら、丼に移す。菜箸で具の乱れを整える。三つ葉をそもよい。