せいふんこうてい【製粉工程】
                 参考リンク  そばこ【蕎麦粉】
                         ロールせいふん【ロール製粉】
                         いしうすびき【石臼挽き】

@ 精選工程
「玄ソバ」には、ソバの葉・茎・小石・土砂、他の植物などの種子が混入しているので、完全に除去する。これら夾雑物をゴミ取機、石取機などによって除去し、玄ソバを研磨機によって研磨する工程を精選工程という。

A 脱皮工程
精選された玄ソバは、果皮(殻)に包まれているので、皮むき機などによって果皮を取り除く。脱皮した果皮は、「そば殻」といわれ枕に使用されている。
脱皮方法はいくつかあるが、ゴム板にぶっつけて殻を取る方法(衝撃式)、石臼の臼を浮かせて殻を取り除く方法、あるいは大割れを作り殻を取る方法など一般的。
石臼の場合を例にとると、精選された玄そばを篩にかけて、粒子の大きさによって、何種類かに選別し、これらを別々の石臼にかけて殻を取る。
石臼は、上臼を固定し、下の臼を上下できるようになっており、玄そばの粒の大きさに合わせて調整し、下臼を回転させながら殻を取る。殻を取り除いた玄ソばは「抜き」と呼ばれる。
現状では、玄そばから脱皮工程によって100%抜きを取ることはむずかしい。どうしても割れができてしまう。割れができる時に、粉が生じるが、これを″下粉″(したこ)と呼ぶ。″下粉″には、殻の小片や、がくなどが混入しているので、黒い色をしており、ザラザラしている。

B 製粉工程
このようにして脱皮工程をへた「抜き」や「割れ」を、ロール製粉機石臼によって製粉にする。ロール製粉機の場合、一番ロールを通り、篩い(シフター)を通って得られた粉が、内層粉であり、一般に「一番粉」と呼ばれている。抜きの中心部の粉で、白色ででんぶんが主体のサラサラした粉であるが香りや、風味は余りない。
一番ロールで粉にならなかった部分が、次のロールにかけられ、篩いで選別されこの粉を、中層粉あるいは「二番粉」と呼ぶ。香りや風味に優れ、栄養価も高く、色は淡黄色をおびている。
残った部分がさらに次のロールにかけられ粉砕され、篩いによって仕分けられた粉が表層粉であり、「三番粉」といわれている。この粉は、そばの香りが強く、色は鮮度のよい時はやや緑色をおびており、栄養価も最も高いが、食味、食感性に劣る。また、この部分は繊維質が多く、粉になりにくい。
したがって、三番粉をいかに粉にするか、また、いかに一番粉、二番粉に混入するかによって、製品としてのそば粉の特性が決まる。
一般に、三番粉まで製粉するが、さらに「四番粉」(末粉)(すそこ)を取ることもある。
また、穀の細片と甘皮の繊維の多い部分は″さなご″と呼ばれる。るといったように、組織別にそば粉を取り分ける連続製粉方式が採用されている。

C 精製工程(仕上げ工程)

粉タンクにそれぞれ取り分けられたそば粉の中間製品を、いろいろ組み合わせと比率でミックスし、仕上げたシフターで夾雑物を取り除き、ニーダーででよく攪拌して、製品化し、袋詰めにする。 
 

そば製粉のポイント

良いそば粉を取るためには、まず、良い玄そばを選ぶこと、そして、完全に近い形で″抜き″を取ることが大切である。玄そばは、生きている種実であり、常に発芽に向うエネルギーを持っている。そのため、脂質あるいは葉緑素などの微量成分の化学変化が生じる。
したがって、玄そばを低温恒湿倉庫に保管するなどの方法で、玄そばを冬眠状態にする必要がある。
このような状態で保存すると、新鮮さが失われず、新そばに近い風味や色調を持ったそば粉を製粉することができる。
また、そばは熱に対して非常に弱いので、必要以上に製粉工程で熱が加わると、そば特有の風味が飛んでしまう他、麺にした時の色の変化が早く、いわゆる″やけた″粉となるので、注意を要する。


製粉方法の違い
 
1、ロール製粉
  
ロール製粉は、能率がよく、経済性に秀れている。
ロール製粉の場合、二本のロールをかみあわせることによって製粉するが、各々のロールの回転度や、ロールの目の立て方によって、粉の品質が微妙に変化するため、これらは各製粉工場のノウハウの一つになっている。
一般にロールの回転数は、毎分250〜300位で、できるだけ粉に熱を加えないよう、原料の投入を調整したり、ロールを水冷にしたり、ロールの中にたまった熱気を除去する装置などを取付けたりしている。
 
2、石臼製粉
 
石臼製粉の場合、ロールが円の接点で粉にするのに対し、面と面で粉にする。
石臼の場合も、粉に熱が加わらないように臼の溝の切り方や目の立て方、原料の投入量、臼の回転数が非常に重要である。(図1参照)
昔は、手まわし、あるいは水車の力で臼をまわし、臼の重みで粉にした。
現在は、電動で臼を廻す。回転数は一分間30回転位が理想的であるが、能率は悪い。
一般に、ロール製粉の粉の粒子は一定しているが、石臼の場合は不揃いで、見ために悪い。しかし、手に持った感じは、ロールの方がサラッとした感じなのに対し、石臼の方はシツトリしており、熱による水分の蒸発も少なく、風味上優れているようである。


そば粉の性質
 
玄そばの内部構造は、図2のようになっており、果皮、種皮、甘皮部、胚乳部、S字状の子葉部(胚芽)から構成されている。
果皮(そば殻)を除いた種子の化学的組成はでんぶんが主体ではあるが、たんばく質が15%近くを占め、穀類中で最も高い含有率を示している。
たんばく質は甘皮部、子葉部に多く、でんぶんは胚乳部に多い。また、子葉部と甘皮部は、色素にとみ、この部分がそば粉に多く配合されるほど、色は濃くなる。
微量栄養分や、そばの香り、風味も、この部分に多くある。そば粉の主成分である、でんぶんとたんばく質の特質は次の通りである。

●そば粉のでんぶん
でんぶんの性質は、麺にした場合の食感に大きな影響がある。
そばのでんぶんは消化されやすいため、そばは消化吸収が非常によいという特質を持つている。

●そば粉のたんばく質
そば粉のたんばく質は、グロプリンとアルブミンというたんばく質が主で、両者ともに水に溶けやすいという性質をもっている。
そば粉に水を加えてねると、水にふれた部分が溶け、非常に高い粘性をだす。粘質となったたんばく質は、内部への水の浸入を妨げるが、十分に加水し、よくこねることによって、粘性はかなり強くなる。しかし、小麦粉のたんばく質であるグルテニンやグリヤジンのように、海綿のように水分を吸収して組織内に水分を取り入れて保留する性質を持つグルテンという物質を、そば粉のたんばく質の場合は、形成しない。そのため、水分を保留する能力がなく、そば粉だけでは麺線の保持が難しい。そこで、″つなぎ″として小麦粉が一般的に使用される。
また、そば粉のたんばく質は水溶性のものが多いため、茹でた時、そば湯に多くのたんばく質が溶出することになる。そば湯に栄養があるといわれるゆえんである。


そば粉の種類
 
そば店で使用されるそば粉は、大別すると、並み粉、更科粉、それに打ち粉に使用する花粉(はなこ)に分けられる。この他、乾麺や茹で麺用の表層粉(三番粉)中心の黒っぽいそば粉がある。
●並み粉
 普通そば用に使用されるそば粉で、胚乳部と子葉部、甘皮部の混合割合によって細かく区分されている。その中でも、最も需要の多い並み粉を標準粉とも呼ぶ。

●更科粉
御膳粉ともいう。白さでは一番粉同様白いため、一番粉を更科粉と称している場合も多いが、本来は、製粉方法も含めて異なる。用途としては、さらしなや変わりそばに用いる。
本来の意味での更科粉は、色がまっ白でホシ (甘皮、そば殻の微粉)が一つもなく、香りのないそば粉を指す。つまり、高純度のそばでんぶん粉である。
そのため、製粉には最高の技術を要し、手間もかかる。しかも、少量しか取れないため、値段は高い。

製粉方法の概略は次の通り。完全な抜きを、臼にかけて軽く挽き割る。これを篩いよって、大割れと子葉部分、およびヘタの部分を取り除き、五つぐらいにきれいに割れた上割れのみを取り分ける。これをスムースロール (ほとんど目のないロール) で軽く挽くと更科粉がとれる。歩留りは10%前後。しかし、多くの製粉所では、普通に一番ロール機で抜きを挽いた段階で、篩いにかけて取り分けている。

●花粉(はなこ)
打ち粉)に使う粉で、白粉(しろこ)ともいう。
抜き、あるいは玄そばを挽き割った時に、粉になってしまう実の中心部に近い粗雑な組織の粗めの白い粉で、これをふるい分けて取る。花粉は、更科粉のように白い粉であるが、ほぞの粉になりやすい着色部分が混ざるため、よくみると黒ずんでいる。
この花粉も、本来の意味で取り分けている製粉所は少なく、一番ロール機で挽いた後に、更科粉同様、篩いにかけて取り分けるのが一般的である。また、打ち粉には、一番粉を用いることが多い。


そば粉の見分け方
毎日、そば粉の状態を目と手、さらに舌で、常に把握しておくことが前提で、その経験をもとに、次のような見分け方がある。
 
1、紛を一つかみつかむ方法
並み粉の場合、指の跡がつくようにかたまり、そのかたまりにすぐヒビが入って崩れやすいほど、新しい。また、握りしめた時に、キュッと泣く粉は、たんばく質が流出したか、分解されたもので、古い粉である。
 
2、指先で粉を取り、なめてみる方法
この時、甘みの強い粉ほど、粉は新しいといえる。
舌先を上あごにつけて、粉のザラつきをみることもできる。また、指先にツバをつけ、粉をつけてもんで、粘り具合をみるのも一つの方法である。粘りの強い粉は新しいといえる。

3、粉の色で判断する方法
これには、かなりの熟練を要する。簡単にそば粉の色合いをみるには、ペッカー試験といってガラス板の上に基準となる粉と比較する粉を平らにならし、これを水にひたして、ぬらした状態でみる方法がある。この方法で、色調がくすんでいたり、白度の高いそば粉でも微紅色をおびているものは、そば粉の質が余りよくないといえる。


そば粉の保管方法
 
そば粉は、玄そばと比べると、はるかに劣化が激しいので保管には特に注意しなければならない。
仕入れは、一週間に三回ぐらい、必要な量だけ届けてもらうのが、そば粉の鮮度の点からは好ましい。必要量を袋から取り出した後は、外気にふれないよう必ず袋の口を閉じて、冷暗所に保管することである。ことに、そば粉のたんばく質は水溶性であるため、厨房のような高温高湿の場所に保管することは、絶対避けなければならない。当然のことであるが、そば粉は先に仕入れたものから使うのが厳守事項である。
ある程度の日数を保管する場合は、低温保管するとよいが、だし入れの温度差は5度Cが限度で、それ以上になると、そば粉がアセをかき、品質の劣化を早めてしまう。
また、そば店では、昔から「木鉢下」という保管方法がある。
そば粉と小麦粉とを一緒に混ぜて入れておくもので、そば粉が直接空気に触れないため、酸化の作用を防ぎ、そば粉が劣化するのを防ぐ働きがある。また、そば粉のフレイバーが飛ぶのを防ぐ効果もある。