そばつう【蕎麦通】
                  

村瀬忠太郎著。昭和五年(1930)、四六書院「通叢書」の一冊として発行。四六判(ほぼ今のB六判)洋装、本文215頁で定価70銭だった。
村瀬は東京滝野川区中里町(現・北区)にあった日月庵・やぶ忠という手打ちそば屋の主人で、安政六年(1859)生まれ。本書は名人やぶ忠を掘り出した文筆家高岸拓川(たかぎしたくせん)が、村瀬の口述をもとに該博な知識と史料を駆使してまとめたものである。『蕎麦志』や『蕎麦考』から引用しているとはいえ、著者の見聞や体験を中心にして記述したのが大半を占め、しかもその部分が生彩を放ってそばと汁の製法を詳説、地方の郷土そばや食習も取り上げ、栄養価に至るまで記してある。


やぶちゅう【やぶ忠】
 
正式には「日月庵・やぶ忠」で東京都北区滝野川中里にあった手打ちそばの名店。昭和四年(1929)四月に佐藤春夫、豊島与志雄ら文化人が集まって第一回の変わりそばの集いが開かれ、その後毎月の例会となり、とみに名が上がった。主人の村瀬忠太郎は昭和13年(1938)88歳で死去、店も同15年(1940)に代がわりした。このやぶ忠と関わりの深いのが片倉康雄(足利・一茶庵本店初代)、高井吉蔵(山形・萬盛庵先代)らである。